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“流離う母”三部作【レクチオ】さすらうははさんぶさく
〈『星』シリーズ 〉全8作を俯瞰すると、『白鳥の星』『バレエ星』『さよなら星』では、「肉親との死別」あるいは「公に認知されないままの母娘関係」という形での「現世での母と娘の離別」が描かれる。一方、続く『かあさん星』『まりもの星』『バレリーナの星』では、「母は一時的に記憶を失い娘の前から姿を消すが、放浪の末再び戻り、娘との親子関係を回復させる」プロットが共通しており、また母の「舞踏家としてのキャリアと母としての生き方の相克」が物語の隠れたテーマとして加わるようになる。本ページ〈『星』シリーズ 〉のレクチオでは、そのような後者三作の共通する性格を“連作”として捉え〈“流離う母”三部作〉と呼んでいる。この“母の放浪”のプロットは66年版『かあさん星』で既に描かれたものであるが、〈『星』シリーズ 〉の共通する題材である「バレエ」によって芸道ものの要素が加味され (*1)、“母の不在”は“バレエの道をあゆむ上での試練”としての意味を持つに至る。
なお「記憶喪失による放浪と記憶回復による家庭回帰」という点では、続く『ママの星』にも同様のプロットが描かれるが、上記〈三部作〉で“記憶喪失と放浪”が「母としての在り方」のテーマに深く関わってくるのに対して、『ママの星』ではそのようなテーマ性よりもスリラー的サスペンスの彩りとしての性格が強い。また、そこに描かれる母の在りようは〈三部作〉よりも堅実で、ある意味古風ですらある。【→『ママの星』総論参照】
さゆり【人名】さゆり
カンナと瓜二つの少女。東北の山奥の村で生まれ、両親を早くから失い、おば夫婦の家で暮らす。北海道に向かう途中でカンナを見失ってしまった秋山夫人の勘違いに乗じてカンナと入れ替わり、山を離れて東京で生活する。その後、カンナを亡き者にしようとも企むが、改心後の後日譚では白鳥家や秋山夫人との関係も良好、カンナを助けて和田バレエ団再建の良き協力者となる。
- 最終更新:2019-09-12 15:24:48