バレエ星 |
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「小学二年生」昭和44年八月号 |
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梗概 |
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扉絵 |
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入院するかすみへの面会を阻まれる母とアーちゃん
☆ これまでのお話
★ [1~15]
[11] 「あなたにもしものことがあったら、おかあさまにもうしわけないわ」
花田先生にとって「かすみの母から娘を委託された事」は守られるべき重要な一点。
この事はその後に描かれる花田先生とかすみの関係悪化状態の中でも、二人の心を繋ぎ止める細い“縁の糸”となっている。
★ [16~49]
[18] 「ママ、ママって、うるさいわね」
この場面と、後出のかすみの山中徘徊場面では、あざみさんがかすみと母の関係を悪し様に語っている。全くの作り話ではあるものの、かすみの母娘関係に対するそのような思い描き方の背景には、物語前史でのあざみさん自身の母娘関係が良好なものではなかった事が投影されているのではないだろうか。あざみさんが“生まれ育った家庭”を嫌い、その代償として花田先生に“母親としての愛情”を求めていたとすれば、本編を通じて描かれる彼女のかすみに対する敵愾心も理解できないものではない(とはいえ、しでかしたあれこれにはまったく同情の余地などはないが)。
[23] 「なぜか、いもうとばかりかわいがって、かすみちゃんをぶったりけったりするんです」
「打ったり蹴ったり」はもちろん嘘話だが、妹のみを連れて遠隔地に向かった事も(聞きかじりではあるだろうが)念頭にあるものと思われる。
[26] 同情して泣く様子の看護婦
初めは嘘泣きのつもりが、いつしか自分でも本気になって泣いている様子のあざみさん。そんな半ばヒステリックな空気に看護婦も影響されてしまう。
[27] 「ほんとね。わすれたほうがしあわせになれるわね」
決して悪い人物ではないのだろうが、いささか思慮の足りない様子。その単純さは彼女に医療従事者としてはありえない非常識を思いつかせる。
ところで、状況からこの台詞は看護婦のもののはずだが、フキダシの向きが看護婦とあざみさんの両方を示してしまっているのは筆の滑りか。
(*1)
[28] 「いいことがあるわ。心りりょうほうがいいわ」
以下に語られ実際に試みられる“心理療法”は催眠術を用いる方法のようである。
催眠術はTVショーなどでしばしば実演され、本物なのかヤラセなのかわからない場面もよく見られた。
[34] 「いいわ、わたしにまかしておいて」
握りしめた右手が、「この子のために、そんな酷いお母さんなんか追っ払ってあげる」という意気込みを示している。あざみさんに完全に“洗脳”された状態ともいえるが、もともとのこの女性の思慮の足りなさに由来する“単純な正義感”もあるだろう。
[36] 「まあきれいな人だわ」
どんな“鬼婆”かと思って意気込んでいたであろう看護婦は、その想像とは全く逆の清楚な女性を目の前に戸惑っている様子。
[37] 「かすみの母でございます。あわせてくださいますか」「はあ、あのう……」
そして物腰穏やかに語りかける姿に「先ほど聞いた話とは全然印象が違う」とさらに困惑、返す言葉もしどろもどろになっている。
[38] 「それが、あわせられませんの」
「追い返してやる」と息巻いていた時ならば、あれこれと言い返せたのかもしれないが、想定外の状況でただ「会わせられない」という言葉しか見つからない。
[39] 「なぜでございましょう?」「もうしあげにくいのですが、」
それでも母は務めて平静に“会わせられない理由”を訊ねる。看護婦も正当な理由が見つからず、どう返答するか迷っているが…
[40] 「かすみちゃんが、おかあさんにあいたくないっていってるんです」
もちろんかすみはそんな事を言っていない。この思慮の足りない看護婦も自分が「嘘をついている」事にはさすがに後ろめたさを感じている様子で、母から視線をそらしている。
[41] 「ほんとうです。おかえりになってください」
母の「そんな事を言うはずがない」という追求にも、壊れたラジオのように「帰ってくれ」を繰り返す看護婦。目の前の女性とあざみさんのどちらが真実を語っているのか、頭の中では思慮の足りなさゆえに混線して、思考停止状態に陥っているようである。新興宗教やSF商法
(*2)などに引っかかりそうな性格なのかもしれない。
[49] 「あっ、そうじふにでもなれば……」
[72S2-IXb]ではこの後に1ページ分3コマが追加され、母はアーちゃんに家で待っているように話す
(*3)が、アーちゃんは「自分も仕事を手伝いながらお姉ちゃまを探す」と返事する。この加筆部分によって、本編
[50]以降でアーちゃんが母と一緒に掃除婦をする場面につなげている。
★ [50~66]
[51~54] 掃除婦姿の母とアーちゃん
本編中の外出着が例外なく和服
(*4)の母が見せる珍しい「和装ではない“制服姿”」。
息を切らせながら掃除をする母の姿が描かれるが、現役時代には一公演2時間以上に及ぶようなバレエの舞台をこなしていた彼女が、肉体労働とはいえここまで息も絶えだえになっているのは深刻な健康状態。小康を保っていたところでのこうした無理が、持ち直していたのかもしれない母の健康を蝕んでいく。
「幼児を働かせるとは何事」という批判の沸き起こる事必至の場面ではあるが、物語の上では先に記した[72S2-IXb]の追加ページにあるように、アーちゃんはあくまでも「母の後について掃除(の仕事のまねごと)をし」ているに過ぎない。