70S4-VII (小四・七月号)

白鳥の星
掲載 「小学四年生」昭和45年七月号
頁数 見開き扉+10p.
総コマ数 39
舞台  
時期  
梗概 カンナと秋山夫人の前に姿を現したさゆりは「なりすましを続ける事で一生怯えて生きなければならないのに堪えきれなくなった」と告白する。勘違いとはいえ、なりすましの原因を作ってしまった事に赦しを乞う秋山夫人。しかしカンナは「醜い火傷の跡が残ってしまった自分には、和田先生のバレエ団を継ぐ事はできない。自分はこのまま“原田さゆり”として村で一生暮らす」と言って譲らない。カンナの弱気な言葉に秋山夫人は思わず手を上げる。「そんな事をして、和田先生がお喜びになると思うの?バレエを見にくる人は火傷の跡を見に来るんじゃないのよ。踊りを見に来るのよ…」今まで秘められていた“母としての想い”の籠められた叱咤に、カンナは心打たれる。そして「東京へ帰る前に、一度だけ、一度だけ“お母様”と呼ばせて!」ーー離れ離れであった“母娘の白鳥”は、ここでようやく抱き合う事ができた。二人の母娘の絆は、これからも世間的には秘められたものであり続けるだろう。しかしその繋がりは永遠に途切れることのない強いものとなったのである。そして、その二人の姿は、母の愛を知らずに育ち、これまで二人を利用する事しか考えていなかったさゆりの冷たい心をも、温かい涙とともに融かしていくのだった。すべてが解決し、東京の懐かしい白鳥家に戻ったカンナ。これからはきっと、幸せな毎日を送る事だろう…
扉絵 見開き単色/「かなしいバレエまんが」/涙を流すカンナと秋山夫人

母娘と呼び合うカンナとかおり…そして結末

これまでのお話

真相を明かすさゆり [1~35]

[7] 「でも気がついたんです。これでは一生いつわりの生活を続けなきゃならないんだと」

ここでのさゆりの“なりすましの告白”は、まだ「自分自身の問題解決」に止まっている。カンナおよび秋山夫人との真の意味での和解は、[18]以後の場面を経て初めてなされる。

[10] 秋山夫人の後悔「わたしがさゆりちゃんをカンナちゃんとまちがえさえしなきゃ…」

その通り」と頷く読者も少なくなかっただろう。

[11~12] 「おねがい、さゆりちゃん。あなたは今までどおりカンナでいて!」

[16] 火傷の痕のトラウマ

[18] カンナを平手打ちする秋山夫人

ドラマ的にはありがちなパターンだが、カンナに手を上げる秋山夫人のこの場面の感情は、まさに“母として”の愛情ゆえのものといえるだろう。

[24] 「東京へ帰る前に、一度だけ、一度だけおかあさまとよばせて!」

[18]の“母の愛の行為”を受けての言葉。

[30~32] 素直な心を開くさゆり

母を知らずに育ったさゆりが、偽りではない“母と娘の結びつき”に触れて流した涙。




さゆりの心の変化の兆し

Etoile1-70S4-07-030.pngこれまでの流れを見て、秋山夫人が[18]でカンナに手を上げ、[24]でカンナが彼女を「おかあさま」と呼ぶまで、さゆりは秋山夫人とカンナの「母娘関係の事実」を知らなかった事に留意すべきだろう。[20,28]で見せる彼女の驚きは、これまで“赤の他人同士”と信じきっていた秋山夫人とカンナが、目の前で情においてぶつかり合い、いかなる世間の事情のもとにあろうとも親子の見えない絆の糸で固く結ばれている事に、今更ながらに気付かされたためではないか。これまでこの二人を利用する事だけを考えてきたさゆりは、それがいかに罪深い事だったのかをここで思い知ることにもなったと想像される。そしてその後悔の涙は、それまで自分に対して示されてきたカンナの変わらぬ優しさへの気づきと、それを育んだ生みの母・育ての母との“親子の絆”への憧憬を含んだものとも言えるだろう。
そして以後、さゆりも二人に素直な心を開くように変わってゆく事は、本編終了後の“後日譚”[70S4-VIII]で示される。

カンナの白鳥家への帰還 [36~39]

バレエポーズ集

F1-Canna.png


  • 最終更新:2019-03-29 18:33:39

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